三菱i

先月末にデビューした三菱の新型軽自動車「i」(アイ)に試乗してきました。
エクステリアなどの感想については1月25日のエントリで触れているので、
今回は走りや内装を中心に感想を述べたいと思います。


まず、ショールームの展示車で居住性を確認。
グレードは最上級の「G」の4WD仕様、色はクールシルバー。
身長約165cmの私が一番しっくり来るドライビングポジションに調整します。
運転席はスライド、リクライニングの他に高さ調整が付いていますが、
一番低い位置に調整しても全体的にアップライトな乗車姿勢になります。
個人的にはもう少し低くなってくれると好みなのですが、
これはこれで見晴らしがいいので、悪くないと思います。
対して、ステアリングは少し低め。シートを一番低くした状態でしっくり来る感じなので、
これより高い着座位置をとる人だと少し低すぎるのではないかという気もします。
迂闊にもステアリングのチルト&テレスコピック機構の有無を確認し忘れてしまったので、
もしかしたら調整可能なのかもしれませんが。
ステアリングとシートの距離は、シートを最前にして丁度いいくらい。
国産車全般に言えることですが、ペダル類の距離に比べてややステアリングが遠すぎる感も。
Gに標準装備の本革巻ステアリングホイールは、握った感じはサラッとしていてなかなかいい手触りです。
ただ、実際に操舵した時にすべりはしないかという点は多少気になりました。
レッドとグレーの2色ある内装色のうちレッドの方でしたが、
カジュアルなイメージのiにはレッド内装はマッチしていました。
シートそのものの出来は、軽自動車にしてはしっかりしていて身体にいい具合にフィットします。
インパネのデザインは奇抜すぎず普通すぎず。エクステリアほどのインパクトはありませんが、
使い勝手とデザイン性のバランスは取れているように感じました。
リアシートに移動。私が前席のポジションをあわせた状態では、
超ロングホイールスペースの恩恵もあって足元の空間はかなり広く、
軽自動車のレベルを超えています。
ただし、前席下に燃料タンクを配置しているためか前席下に爪先を入れにくく、
また座面高の関係で膝下が浮きがちなのがやや気になるところ。
頭上の空間は、足元ほど広大ではないものの十分なレベル。
ラゲッジスペースは、その下にエンジンを搭載しているためフロアが高く、
重い荷物を載せるときや転地方向に大きな荷物を入れるのはちょっと不得手かも。
もっとも、軽自動車の主な使い方を考えれば十分かもしれません。


いよいよ試乗。グレードは中間の「M」、4WD仕様。色はライトイエローソリッド*1
最近流行の、鍵さえ持っていればロック解除やエンジン始動が出来るキーです。
このキー、置き場所をディーラーの人に聞いたところシフトレバー前の
カップホルダーにでも入れておいてくださいと言われたのですが、
キー専用の差込穴などはないのでしょうか。
キーを置く定位置があったほうがいいように思うのですが。
ともかく、エンジン始動。エンジンはリアミッドシップにあるので
音も後方から聞こえます。
ATのセレクターをDに入れます。セレクターの操作感は良好。
ディーラーを出て、片側2車線の幹線道路に合流。
MIVEC付きの新開発ターボエンジンは特に中低速域のトルクがあり、
無闇にアクセルを踏み込まなくても十分に流れに乗ってくれます。
4速ATとのマッチングも良好。このATはシフトショックも少なく、
アクセル操作に対するレスポンスも十分。
3気筒なのでサウンドがいかにも「軽」なのは致し方ないところですが、
それを意識させられるのは加速中くらい。その場合でも無闇にうるさくなるようなことはなく、
基本的に流れに乗って走っているような状態では静粛性は良好です。
振動については、リアシートに乗っていたディーラーの人の証言によれば
信号待ちなどの停車時にのみ振動を感じるが走行中は問題ない、とのこと。
ステアリングや足回りはしっかりしており、
70km/h程度の流れでは全く不安を覚えることなく走れます。
エンジンが後部にあるといっても、通常の流れに乗る分には特に何か気を使うわけでもなく、
普通に乗ることが出来ます。まあ当たり前か…。
特にステアリングは、電動パワステにもかかわらず操舵感が自然で
路面との接地感もよく感じられるのでかなり安心感があります。
個人的には、不自然にプランプランと軽く不安定だった
日産ティーダの電動パワステよりいい出来だと感じました。
足回りが硬めで、段差を越えた後の揺れなどがすぐに収束してくれるのも安心感が高いポイント。
軽の割に、いい意味でどっしりした乗り心地です。
高速コーナーでも、高い車高の割に、グラッと傾く不安定なロールを見せることはありません。
あまり軽に乗ったことがないので他の車はどうなのか知りませんが、
走りの質感についてはかなりいいレベルであると思います。
ただし、ブレーキはいただけません。制動力の立ち上がり自体もやや緩慢ですが、
さらにパッドがローターに食いつかず上滑りするような印象があり
思ったほど減速してくれないという印象が残ります。
また、踏力による微調整も今ひとつ受け入れてくれない感じ。
この点に関しては、ディーラーの人も認めていました。
とりあえずパッドの見直しだけでも、早急にお願いしたいところです。
高い着座位置と大きなフロントガラスのおかげで前方の見晴らしは良好です。
現行オデッセイの、絶望的に大きい右前方の死角を知る者としては
大きく寝たAピラーが視界にもたらす悪影響を懸念しましたが、
ピラーそのものが太すぎず、また三角窓が有効に働いていて
思ったほど死角は大きくありませんでした。
インパネはデジタルのスピードメーターで、視認性がよく好印象でした。


ざっとこんな感じで、一般道での流れに乗った走りをメインに述べてみました。
ブレーキの問題はあるものの、車として基本的な資質は総じてかなり高いと感じます。
ただ、どうしても脳裏にちらつくのは128〜161万円という価格帯。
軽自動車として考えると、やはり「適正だ」とは言い切れない価格のように思ってしまうのです。
これでもう少し安ければ…。
とはいえ、見た目も斬新でオシャレ、車内は広く、走りも満足のいく仕上がりということで、
ちょっと洒落たセカンドカーとしてはもちろん
軽をファーストカーにする人にも薦めていいかな、と思います。
三菱、かなり頑張ったな、という印象です。

*1:この色、カタログなどでは黄緑っぽく見えますが、実車は普通の黄色といった感じで印象が結構違うので、買おうと思っている方はご注意を