アルピナ

アルピナB10

アルピナをご存知でしょうか?
アルピナとは、分かりやすく言えばBMWのチューンドカーです。
アルピナ社がBMW車のホワイトボディに一台一台手造りに近い形で、
独自の哲学に基づいて専用にチューンされたスペシャルなエンジンや足回り、
ノーマルとは一線を画す高級仕様の内装などを組んで、
高性能かつ高級*1BMWスペシャルモデルを作り上げるのです。
ただのチューニングメーカーではなく、れっきとした一つの自動車メーカーとして認められています。
ただ単に高性能なだけでなく、内装などにも非常に手が掛かっており、
自動車好きの間でも一目置かれる存在です。


そんなアルピナなんと乗る機会を得ました。
乗ったのは先代E39型5シリーズがベースの「B10 V8」
355ps/48.9kgmを発生する4.6LのV8エンジンを搭載したモデルです。
トランスミッションはスイッチトロニック*2付き5AT、
35/30扁平の19インチという凄まじいタイヤを履いた2002年式。
アルピナ・ブルーというアルピナ専用色のボディが美しい…。
走行距離は1万km弱。新車時の車両価格は1200万円。( ゜д゜)…。


まずは乗り込んでみます。明るいベージュ系の本革内装は、
流石にレガシィB4のセットオプションで勝手にくっついてきた本革シートとは
風格が一段も二段も違います。ステアリングやシートには青と緑のステッチが入れられ、
ウッドパネルも当然本木目。使い方も嫌味でない程度。うーん、やっぱりスゴイわぁ…。
チューンドカーという言葉から連想されるような
スパルタンさとは全く無縁の世界が広がっていたのでした。


ドラポジを合わせてみます。ステアリングは電動チルト&テレスコピック機能がついていて、
調整幅も広くいい感じです。が、ペダルが遠い…。
シート*3をいくら前に出しても、いくら高さを調整しても、
ブレーキペダルを床まで踏み込もうとすると身体が少し不安定に…。
流石ドイツ車。足が短い日本人には少々ツライ設定のようです(苦笑)


乗って走り出してみます。慣れない左ハンドルなので慎重に…。
と、ステアリングのギア比が異様にスローなのか、
駐車場や普通の交差点などでも思ったより多く切り込まないと曲がりきれません。
そう言えば雑誌などでも「BMWのステアリングはスローだ」と書かれていたのを見たような…。
でも以前乗ったE46型3シリーズや最新の1シリーズは全然違和感無く乗れたんですが…。
このE39型5シリーズは、E46よりも更に古いモデルですから、
良くも悪くも昔ながらのBMWテイストが強いのかもしれません。
このステアリングにはこの後もあまり馴染めませんでした。


街中を走ってみます。さすがに静粛性は高いですね。乗り心地も、
超扁平タイヤを履いている割には悪くないと思いました。
ただ、少し荒れた路面では少し足元がバタつくような印象が。
もう8年くらい前の車がベースですから仕方ないような気もしますが、
ボディ剛性も特に高いようには感じられませんでした。
そこへ持ってきてコンプライアンスが低い35/30扁平のタイヤですから、
衝撃をボディが吸収しきれない感も…。
エンジンは排気量が大きいだけあってパワー&トルク共に申し分ないです。
NAのため、レガシィのターボのような爆発するようなパワー感はありませんが、
スムーズで上品な感じです。ただ、耳を澄ましてみるとV8にありがちなビートが僅かに聞こえてきます。
「ドドドドド」とか、「ドロドロドロ」とか、そういった系統の。
免許が無いころに乗せてもらった事があるBMW X5*44.4iのV8に比べれば
だいぶ洗練されたマナーを示しますが、やはり直6の様なスムーズさ*5は無理ですかね。
ステアリングがスローな事は前述しましたが、ギア比云々ではなく
ステアリングフィールがイマイチというのは意外でした。
路面からのインフォメーションが今ひとつ希薄で、中立付近の手ごたえもちょっと変。
これなら、3シリーズや1シリーズはおろかMINIやレガシィの方がよほど
いいステアリングフィールだと感じました。19インチのタイヤがいけないのでしょうか?
確かに19インチはシャシー性能的にもオーバースペックな感はありましたが…。


さて、この車が一番得意とすると思われる高速道路に乗ってみます。
パワー&トルクが物凄いので合流もクルージングも楽ちんです。
静粛性も抜群。スイッチトロニックを使ってシフトダウンして踏み込んでみると
物凄いトルク感でグイっと加速します。これが大排気量エンジンかぁ〜と感心。
もっとも「これくらいなら私のレガシィも負けてない」とは思いましたが(ぉ
このV8エンジンはしかし、トップエンドはイマイチ面白くないです。
レッドラインの6000回転付近になると明らかにパワーもトルクも落ち込んできて、
ただ回っているだけという印象。上の気持ち良さならレガシィの勝ちだぜ!(ぉ
中回転域の図太いトルクを利用してゆったりクルージングするのが一番合いそうですね。
さて、ここでも問題なのがステアリングフィール。スピードを上げていくと
どんどん接地感が薄れてきて手応えが曖昧になっていきます。
私のレガシィなら、180km/hでも接地感は失われず正確なフィールを伝えてくれるのですが、
このB10ではそのようなスピード域に踏み込むことはちょっとためらわれます*6
とにかく高速で自信を持ってステアリングを切っていくことが出来ないのです。
スタビリティもそれ程高いとは思えず、ダンピングも不足気味。
アウトバーンの国ドイツで生まれたはずなのに…。
何となく車と自分の間に何かが挟まっているような感覚が拭いきれませんでした。


高額車で慣れない左ハンドルというのも手伝って、
運転にかなり気を取られてあんまり車そのものをよく見られなかったような気がしますが、
今回乗った範囲では、想像していたほどいい車ではなかったとしか思えませんでした。
今回のB10 V8は車重も1.7tを超え、動きもどこと無くモッサリした感じで、
少なくとも私の好みではありませんでした。
履きこなせない19インチ、今ひとつのボディ剛性、違和感のあるステアリングフィール…。
特別な内装や、ノーマルの4.4Lよりずっとキレイに回るV8エンジンなどには惹かれましたが…。


あるいは、私はアルピナを理解するにはちょっと若すぎたのかもしれませんね。
今はレガシィB4の方が自分の性に合ってます。

*1:かつ高額

*2:要するにMTモードです

*3:スライド、座面高、リクライニング、座面長、ヘッドレスト高さ調整まで全部電動

*4:SUV

*5:理論上は直6が一番燃焼のタイミングのバランスが良くスムーズ。

*6:フルタイムAWDの車とただのFRの車を比較するのはアンフェアでしょうか?