荷物がたくさん載るランエボ

http://www.mitsubishi-motors.co.jp/EVO-WAGON/
数年前から色々な雑誌で再三にわたって登場の噂が囁かれていた
ランサーエボリューションのワゴンバージョンが遂にデビューしました。
ボディの前半分は完全にエボ9と同一で、ビルシュタインダンパー、
GTに搭載される280ps/40.0kgmを発生するMIVEC付き4G63ツインスクロールターボエンジン、
6速MT、セミバケットタイプのレカロシートなどは完全にセダンのランエボ9譲り。
ワゴンにエボのメカニズムを積んだというよりは
エボのメカにワゴンのボディを乗せたといった方が正確かも。
エクステリアは、荷室部分が大きくなるためかセダンほどのシャープさはなく
カッコよさという点ではエボ9に一歩譲りますが、
エボワゴン専用のブリスターフェンダー、エボ9譲りのディフューザー形状リアバンパーなどは
単独で見れば結構いい感じにまとまっていると思います。
インテリアについては、前半分を見ている限りは通常のエボ9と変わらないように見えます。


さて、当然ながらセダンのエボとの違いもあるようです。
一番の違いはボディ形状として、そのほかの違いとしては

  1. AYCの設定がなく、ACDのみの設定になる。
  2. GSRグレードが無く、6MTのGTと5ATのGT-Aといった2本立てになる。
  3. アルミルーフではない
  4. GTの最大トルクがセダンよりやや落ちる
  5. GT-Aの内容がランエボ7のGT-Aと結構違う

といった点が挙げられます。
まずAYCの設定がない点についてですが、これが一番大きな違いではないでしょうか。
AYCはアクティブヨーコントロールの略で、コーナリング中に左右後輪の駆動配分を
状況に応じてアクティブに変更することによってコーナリング性能を高めるデバイス
エボ4で初採用され、それ以降のランエボには必ずAYCが装着されてきました。
それはランエボ7GT-Aでも同様でしたし、エボ8からは更に制御が進化した
スーパーAYCになり、競技用グレードのRSにも設定されるなど
今やインプレッサとは決定的に異なるランエボアイデンティティとも言えるデバイスです。
それが今回のランエボワゴンには設定されません。
一応7以降から採用されたACD*1が標準装備されていますが、
ランエボのワゴン」を標榜するのであればAYCの設定は必須だったのではないかという気もします。
AYCがもたらす独特な操縦性と圧倒的な旋回性能は
ランエボという車を語る上で外せないアイデンティティだったような…。
とにかく、エボワゴンの駆動システムはエボ9で言うところのGTやRSと同じシステムになります。
で、2番目の「GSRグレードがない件」ですが、これはAYCの設定がないからかな、という気がします。
6MTを搭載する点がエボ9のGTとの一番の相違点です。あとは装備面で微々たる違いが。
エボワゴンのGTは、エボ9のGSRとGTの中間あたりに位置するグレードのようです。
3つめ、セダンでエボ8MR以降に採用されたアルミルーフはワゴンには採用されていません。
屋根にキャリアをつけたりする機会が多いであろうワゴンゆえの判断か、
将来的に作る予定が無いから型を起こすのが面倒だったのか(ぉ
4つめの最大トルクは、エボ9のGSRが40.8kgm、GTが41.5kgmなのに対し
ワゴンGTでは40.0kgmになっています。車の性格上すこし落としたのかもしれません。
5つめは、セダンとワゴンのGT-Aどうしの比較。
かつて家にセダンGT-Aがあった者の視点から書いてみます。
まず、エクステリアについてですが、セダンGT-Aでは外見を大人しく見せる狙いで
ボンネットのエアアウトレットを廃止していたのに対しワゴンGT-Aでは
通常のエボと同様のエアアウトレット付きボンネットを装着しています。
また、セダンGT-Aではフロントのナンバープレートがセンターに移設された他に
バンパーの開口部も若干減っていたのですが、
ワゴンGT-Aではバンパーは同一のままナンバープレートのみを移設した模様。
インテリアを見てみると、セダンGT-Aのシートは標準がノーマルシートで
オプションで本革かレカロのスポーツシートというラインナップだったのに対し、
ワゴンGT-AはMT車と同じレカロのセミバケットタイプが標準になっており、
本革の設定などはないみたいです。セダンGT-Aが豪華路線を狙っていたのに対し
ワゴンGT-AではあくまでもただのATモデルという位置づけのようです。
ステアリングホイールは、セダンの場合シフトスイッチ付きの三菱汎用ステアリングでしたが
ワゴンではMTのランエボと同じMOMO製のものになっています。
シフトスイッチはついていないみたいです。私の個人的見解ですが、
いわゆるシーケンシャルやスポーツモード付きATのような2ペダル車では
ステアリングにシフトスイッチがついているほうが好ましいと思います。
クラッチ操作や回転合わせが不要で素早いシフトが出来るのが2ペダル車の利点であり、
ステアリングから手を離すことなくシフトチェンジできる
スイッチがあればこの利点が更に高まると思うのですが…。
あとはビルシュタインのダンパーを採用しているくらいでしょうか。
しかしこのビル足ってのは侮りがたいもので、快適性重視のランエボ7GT-Aより
ビルシュタインダンパーをおごったエボ8MRの方が圧倒的に乗り心地がよく
スタビリティも高かったという事実があります。
ダンパー意外にも色々改善した結果だとは思いますが、
いずれにしても足に関していえば恐らくセダンよりワゴンのGT-Aのほうが上回るのではないかと。


そんなわけで、ランエボワゴンは結構力をいれて作った車みたいです。
ワゴンなのにそこまで速さ・走りにこだわる必要があるのかと言うと…正直、ないですね(ぉ
しかしながら、かつて「GT-Rワゴン」ステージア260RSや
STiワゴン」インプレッサスポーツワゴンSTiが存在したように、
あるいは今476psを発生するAMGメルセデスE55Tや450psを発生するアウディRS6アバントがあるように、
この手の無駄に高性能なステーションワゴンというのはある種のステイタスであり
ある程度の需要と言うものが存在するわけです。
そこには必要性とか正当性といった理屈はなく、ただひたすら
「怪物みたいなワゴンがあってもいいじゃないか」というある種の衝動みたいなものがある…はず。
ちなみに、スペック的にはレガシィツーリングワゴンGTがライバルになりそうですが、
レガシィのターボが追求しているものとランエボワゴンが求めたものは全く異質のような気がします。
そういう意味では全くライバル不在のスーパースポーツワゴン。
売れるかどうかは置いといて、久々にいい意味でバカな車が出たと言えるでしょう(笑)
今冬の最速スキーエクスプレスの座を狙うあなたに是非(ぉ

*1:アクティブセンターデフ。センターデフの前後輪差動制限力をアクティブに変化させコーナリング性能とトラクション性能の両立を図る